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虚構―堀江と私とライブドア

~あらすじ~
「ニッポン放送、フジテレビは、なぜ騙されたのか」
プロ野球進出騒動、総選挙、村上ファンドとの関係、ITの寵児が疾走した「既存勢力への挑戦と限界」
まさかコイツじゃないよな。目の前に立つ、ジーパン、Tシャツ、ジャンパー姿の小汚い学生風を見て思った。髪は長く、似合っていない。しかし、東京・六本木の会社から横浜・関内の私の事務所近くまで来てくれたのだから、私のほうから声をかけるべきだろう。「堀江さんですか?」小太りの武田鉄矢風がうなずいた。「ハイ」 1996年3月。それが、それから10年近く苦楽をともにし、最後は東京拘置所にも一緒に入ることになる23歳の堀江貴文と、28歳の私との出会いだった。
(Amazonより)

私の評価:

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~評論~
本書は一連のライブドア事件の際に注目を浴び、現在裁判中(2007年3月の地裁の判決では懲役1年8か月の実刑判決)のホリエモンの側近であった宮内亮治さんの著書で、地裁の判決が言い渡された3月23日に発行されました。
正直なところ、私は宮内さんにそれほど興味もなければ、好きでもありませんでした。本書を読んでも好きになったというわけではありませんが、予想に反してなかなか内容は面白かったです。ホリエモンとの出会いから時価総額を引き上げる過程、その過程で起こしてしまった犯罪、プロ野球参入、日本放送の買収劇などを経て芸能人化するホリエモン、東京地検特捜部による家宅捜索から取り調べ、逮捕。拘置所での生活、そして、今後のビジョンまで書かれています。
ちなみに今現在のところ、ホリエモン以外の逮捕された宮内さんを含む元ライブドア幹部は真っ向から否認するホリエモンに対し罪を大筋で認めており、ホリエモンと宮内さん以外の被告(岡本文人W熊谷史人W、中村長也)は執行猶予付判決を下され、控訴をせず、判決が確定しています。
さて、本の内容についてですが、ほぼ大部分が事件に関することであり、宮内さんの大まかな言い分としては、罪に問われている2004年の時点ではホリエモンは数字にうるさい厳格な社長であった。ただし、ホリエモンが芸能人化した2006年頃からは自分が経営していたと言われても仕方ない。つまりはホリエモンの主張する宮内主犯と言うのはあり得ないということです。まあ、本で嘘をついても仕方ないでしょうから、だいたいが真実であると私は思っています。また、裁判中ですので、全てを書いているとは思えませんが、内容自体は事細かに書いてあると私は感じました。その裁判でホリエモンが全てを否認し、宮内さんに全ての罪をなすりつけようとしていることに関しては、そういう戦い方なのだから怒っても仕方のないことと言っていますが、社長(ビジネス)としてのホリエモンには愛想を尽かしている感じがうかがえます。
一番面白いところは、やはりライブドアが成り上がっていく過程でしょうか。このように事件になっては元も子もありませんが、こういった躍動、急成長というものは読んでいて心を躍らせれます。(私自身ホリエモンが好きだからと言うのもあるのかもしれませんが)
ただ、私にはなかなか事件に関するM&Aやら経常利益の付け替えやらの部分は何度読み返しても理解しにくく苦労しました。
この本を判決の日に発行したことと今後のビジョンが書かれていることから、おそらく執行猶予付判決を下されるものとにらんで、この日を選んだのだと思いますが、残念ながら意図したようには事は運ばなかったと言うことで、今後のビジョン、具体的には中国を中心に展開する事業をするにも年月を要するのではないかと思います。それでも、私はここで落ちぶれずに頑張っていただけたら・・・そう思います。


Wikipediaで宮内亮治を調べる→宮内亮治W
虚構―堀江と私とライブドアLink

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ブルマーはなぜ消えたのか―セクハラと心の傷の文化を問う

~あらすじ~
日本男児の青春の思い出、ブルマーは絶滅した。
それには「人の嫌がることはしない」原理主義とでもいえる
イデオロギーが関わっていた。人の顔色を窺い、
ビクビク萎縮した今の日本が、理想の社会なのか? 
過剰なセクハラ規制・禁煙運動に負けず、ささやかな愉しみを享受する
ために、現役精神科医がおくる知的"闘争"参考書!
表紙にブルマーの誕生から消滅までの写真入年表付。
(Amazonより)

私の評価:

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~評論~
まず、話の対象としなければならない。と言うか避けては通れない印象の残る本書のタイトルですが、これはブルマーWという単語にグッとくる方には惹かれるでしょうし、気持ち悪いと思われる方には退かれるでしょう。ちなみに私は前者でした。(ブルマーフェチというわけではありませんが) これは例えば以前、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? Link 」という本が話題になりましたが、この本の場合は多くの方が読みたくなるような印象づけたタイトルだったのではないかと思います。しかし、本書の場合、印象づける1つの賭けだったように思えます。ブルマー好きを惹きつけ、女性層を捨てるとも取れる賭け。しかし、私は本書を読み終えてタイトルはこれで正解であったと思いました。(商業的にどうなのかは別として)
ですが、私もなるべく誤解を減らすために書いておきたいと思います。本書はブルマーフェチの精神科医が1冊丸々ブルマーについて語りつくす本ではなく、あくまで話の切り口としてブルマーを取り上げたものである。しかし、著者のブルマーへの執着(愛)は相当なものである。ということです。
それにつきましては、Amazonの方で最初の数ページ(目次や序章)でただで読むことが出来ますので、そちらから読み取ることが出来ます。
まずは序盤のブルマーの部分について話したいと思います。私の世代(1987年生まれ)では小学校中学年あたりまではブルマーを確認できた気がしますが、高学年、遅くとも中学からは女子は皆ハーフパンツになったのではないかと記憶しています。(本書に書いてあるブルマーの歴史と照らし合わせても符合します。) そのため、ブルマーに対する性の意識、著者の言うブルマーへの甘酸っぱさ、青春という恩恵を受けることはありませんでした。ちなみに、こういったあってもなくても社会の根本には影響は無いが、無ければ確実に何かが失われるようなものを本書では「辺緑」と言い、これはこの本の重要なテーマでもあります。
ブルマーを切り口にジェンダーフリーW、医療裁判で問題になることも多いインフォームド・コンセントWなど今、社会で話題に良くあがるような事柄を精神科医という見地から批判していきます。これについては私も本当にうなずくことばかりで、序盤のブルマーに関する話に負けず劣らず面白く飽きることがありませんでした。ただ、一つ言うならば性同一性障害について述べているところで著者がクリスチャンであるためか、聖書を引用して紐解いて行くわけですが、クリスチャンではない私にとっては若干いただけなかったかなと思いました。(それについては後書きで著者も注釈を入れていますが)

ちなみに私は最後の方のこの文章にこの本の全てが凝縮されているように思い、印象的でしたので引用させて頂きます。

これは、ユートピアだろうか。そうではない。それどころか、ついこのあいだまで、日本の社会はおおむねこのような社会だった。喫煙者は、好きなところで吸っていた。世の中には、適度のエロスが漂っていて、特別な場所に行かなくても、日常生活の中で程よい性的な満足を感じることができた。廊下に立たされて体罰だと騒ぎ立てたり、先生に叩かれたからといっていきなり告訴するような生徒も親もいなかった。


この文章だけを見るとなんてひどい、古い悪しき社会だと思われる方もいるかもしれませんが、本書を読みむことで、この文章を読む頃には充分納得のいく文章と思えるようになるのではないでしょうか。私はそう思います。
私は本書を読み、改めて、常識とは何だろう、平等とは本当に善なのだろうかと自分に問いただされました。

追伸:よくよく思い返してみたらブルマーでなくてもハーフパンにはハーフパンの良さがあったなと。それは何かと言うと、体育座りをしている子を見ると、そのハーフパンの中が見えそうで見えない。チラリと見えそうで見えなイズム的、そんなもどかしさも、ある意味一つの良さかもしれません。とは言ってもブルマーの感じるそれには到底及ばないものなのかもしれませんが・・・。


ブルマーはなぜ消えたのか―セクハラと心の傷の文化を問うLink

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物語の役割

~あらすじ~
映画「博士の愛した数式」の原作者、作家小野洋子の講演を元に作られたもので、自分の生い立ちと物語の関係、自分の物語を書くという事への考え、物語のもらたす感情の変化など著書や他書の話を交えて書かれている。

私の評価:

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~評論~
私は博士の愛した数式を映画の方しか観ておらず、小野先生の作品は一切読んだことが無いのですが、以前、数学者の藤原先生と小野先生の対談本である世にも美しい数学入門Link を読んでいたため名前を覚えていたので、読んでみました。
中身はだいたいあらすじに書いたとおりですが、読み終わって率直な感想としては物語というものを書いてみたくなりました。まあいざ書くとなると難しいでしょうが、自分も書いてみたいな、書けるかもと思わせてくれました。何故、そう思わせるのかというと物語というものは難しい物ではなく、ストーリーは日常生活の中に転がっていて、後はその転がっている物を選択して加工するだけとか、難しく言うのではなく理解しやすく言われているのが良かったかなと。何より口調が優しく、謙虚で人となりというものが伝わってきたと言うのもあると思います。
普段、物語を読んでいる方は元より、読んでいない方も本書を読むことで別の視点や深く読むことが出来るかもしれません。


Wikipediaで小野洋子について調べる→小野洋子W

物語の役割Link

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時をかける少女

~あらすじ~
主人公である紺野真琴はあるきっかけから時を現在から過去へさかのぼる事が出来るタイムリープの力を得た。最初はこの力で失敗したことをやり直せると喜んでいた主人公であったが次第にそうとは限らないと言うことに気づいていく・・・

私の評価:

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~感想~
去年上映されたときネット上で好評であったため、私も劇場へ見に行きたいと思っておりましたが、残念ながら近くで上映していなかったため見にいくことが出来ませんでした。それで今回レンタルが始まったということで借りてみることが出来ました。
本作はアニメ映画で、舞台は夏です。その夏の情景が素晴らしいですね。全体の雰囲気が好きというのもありますが。内容はどうかというと、あらすじにも書きましたが、現在から過去へさかのぼることが出来るタイムリープという力がテーマであり、それを使うことによって生じる様々な出来事がおおかたの内容です。もし、そのタイムリープを使えたらと考える方も多いでしょうが、時をさかのぼって既に起きた事象を変えてしまうことで、自分にとって良いことにしたとしても、それにより他に影響を与えてしまい、それが悪いことに繋がってしまうことがある。過去を変えると言うことは色々と大変なことだと警鐘をならしています。もちろん、そんなことは出来ないわけで、つまりはただ後悔するのではなく今を精一杯生きて、後悔するときは後悔しろ。と言ったことを訴えているように思えました。
もう一つのテーマは青春です。上で述べたタイムリープと絡み合って甘く切ない青春が描かれており、これには思わず「ああいいものだ・・・」と感じてしまいました。また、音楽も素敵な曲が多く、映画を引き立たせてくれていましたし、キャストも主人公をはじめ、声優ではない方が多かったですが、十分にはまっていて良かったと思います。私個人としては主人公みたいな子、好きですねぇ。(笑)
では何故、星5つではないのかと言いますと、劇中に主人公の使ったタイムリープを使って未来から作中の現代にさかのぼってきた人物がいるのですが、そのあたりが曖昧で不明確だったので私としてはもう少しそのあたりの説明も欲しかったかなと思いました。ですが、約100分でこれだけ良くまとめられるのはすごいなと思います。夏を気持ちよく涼しく感じられる作品でした。

余談ですが、私が借りてきてDVDをテーブルにおいておいたところ、親が「これ、薬師丸ひろ子の奴?」と聞いてきて違うよリメイクしたアニメ映画だよと言ったところ、な~んだと言って見ず、途中から妹が見だしたわけですが。妹も良い映画と言っていました。これは普通にジブリ映画のように大人でも楽しめるアニメ映画だと思うのですがね~。今度、原作と実写映画の方も見る機会があれば・・・と思います。


公式サイトLink
時をかける少女 通常版Link

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父親たちの星条旗

硫黄島の星条旗



~あらすじ~
61年前、硫黄島で撮られた1枚の写真が太平洋戦争の運命を変えた。
1945年2月16日、米軍による硫黄島への侵攻が始り、この戦いは日本軍の戦死者約2万名、米軍戦死者約7000名という激戦であった。
そして、撮られた1枚の写真に写った将兵は国によって祭り上げられ、様々な波紋を呼ぶのだった・・・

私の評価:

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~評論~
まず、私は本作と対になっている硫黄島からの手紙Link は劇場で見ましたので、それと対比しての評論となります。
この作品では硫黄島からの手紙とは違い、写真に写った中の1人の息子が取材をし、まとめた本が原作となっています。そのため、他の写真に写った本人とのインタビューなどの現代と過去を照らし合わせて映画は進み、この作品の主人公は写真に写った6人のうちの3人(他の3人は戦死)で、その写真に写ったことで国が軍事費を集めるための全国を回る国債キャンペーンに出すために帰国させられます。どちらかというとそちらが主題なので激しい戦闘シーンを求める方にはあまりお勧めできませんが、大変考えさせられる映画だと思います。軍の規律、ネイティブアメリカンの問題、国家が戦争を都合の良いように利用する事など、様々なことが扱われていますが、中でも一番重要なもの、それは「戦争における英雄とは何なのか?」と言うことです。本当に英雄なんて物は存在するのか? そこが見所ではないかと私は思います。
ですが、もし、単に面白いか面白くないかと聞かれたら、面白くないと答え、こちらよりも硫黄島からの手紙の方が良いと私は答えます。それは私が日本人だからと言う感情も含まれているためかもしれませんが、硫黄島からの手紙と比べて感動というものが足りないなと思いますね。同じ硫黄島を舞台にしているとはいえテーマが少し違うため、何とも言えませんが、やはり硫黄島からの手紙の方が1枚上手ではないでしょうか。ですから、両方見る場合は私としては本作を見てから硫黄島からの手紙を見ることをお勧めします。


公式サイトLink
父親たちの星条旗をWikipediaで調べる→父親たちの星条旗W
父親たちの星条旗 (特別版)Link

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