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日本近代洋画への道-山岡コレクションを中心に-を見てきました

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茅ヶ崎市美術館Link で1月24日から3月8日まで開催されている日本近代洋画への道-山岡コレクションを中心に-Link を見てきました。
作品数は73点で画家数は49人でした。
一般的に有名な所では円山応挙W浅井忠W黒田清輝W藤嶋武二W青木繁W辺りでしょうか。

平日の午後に行ったのですが、あいにくの雨という事もあってか、なんと観覧者は私1人だけでした。1時間ほどで回りましたが、最初から最後まで私以外の方が見に来る事はなく、独り占め状態でしたので、なんだかとても贅沢な気分になりました。

内容的には去年の9月に行ってきた神奈川県立歴史博物館で開催されていた五姓田のすべて -近代絵画への架け橋-Link に似ていた印象です。ですので、説明が書かれているボードには五姓田派の名前も出てきましたし、作品もありました。さすがに、同じ作品が展示されているという事はありませんでしたが、画家は結構かぶっている部分もあったかと思います。

個人的に印象に残ったのは高橋由一Wの洋画家だけれど日本らしい感じの「鮭図」や、歴史の教科書に必ず載っている風刺画を描いたビゴーの油絵があり驚きました。また、江戸幕府最後の将軍である15代将軍徳川慶喜Wの作品があり、絵自体は微妙だったわけですが、目の前にすると何だか神妙な感じになりました。(笑)
高橋由一「鮭図」
高橋由一「鮭図」

また、五姓田芳柳の1つのキャンバスを2つの枠に分けて左右で対比を描いた「上杉景勝W笑図」に面白みを感じたり、川村清雄の板に油彩した「双鶏の図」など板に描かれた作品は独特の味があるなと感じました。東城鉦太郎Wの「平壌攻略図」や鹿子木猛郎の「日露役奉天入城」など戦争画も格好良かったですね。

そのような感じで、意外と見所のある絵が多かったのですが、私にとっての一番はなんと言っても、青木繁Wの「二人の少女」ですね。
絵としては粗い印象を受けますが、とてもかわいらしく、生き生きとしていて、日本的な良さを感じました。素晴らしい!
青木繁「二人の少女」
青木繁「二人の少女」

全体的な感想としては、これの為にわざわざ遠方より来るほどでも、ない気はしますが、なかなか良い展覧会ではありました。3月8日まで開催されていますので、近くに立ち寄った際に寄られてみてはいかがでしょうか。

余談ですが、私は茅ヶ崎市民だと言うのに茅ヶ崎市美術館へ行ったのは何年ぶりだろうとふと思いました。下手したらオープンした?小学生の時以来かもしれません。(笑)
これからも意欲的な展覧会をして頂けると市民としては嬉しい限りですね。

あと、忘れていました。作品としての面白みは感じませんでしたが、その洋画を取り込もうとする熱意が伝わってきた、素晴らしい細密描写の技術力を感じた作品を載せます。でも、暖かみは感じますね。
五姓田義松「? 形の着物」
五姓田義松「人形の着物」


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レオナール・フジタ展を見てきました

上野の森美術館



上野の森美術館で開催中のレオナール・フジタ展Link を4時20分から1時間40分ほど見てきました。混み具合はこの展覧会の前に行ったワイエス展Link よりも空いていて、かなり見やすい感じでした。
ちなみに上野の森美術館は始めて行きました。

初期から晩年の作まで展示されていて、第二次大戦中の戦争記録画が無かったのは残念でしたが、充分満足できる展覧会でした。

私にとっては藤田嗣治の作品、「カフェにて」Link ほかを去年、国立新美術館で行われた異邦人たちのパリ 1900 - 2005Link で初めて触れて以来、多くのフランス人が乳白色に魅了されたように私も魅了されて藤田嗣治の印象は脳裏に残っていました。
そして、今回、その藤田嗣治の展覧会という事で逃すわけにはいかないと言う事で足を運んだ次第です。

この展覧会の目玉は80年ぶりに発見され、80年ぶりの里帰りである構図の連作と 最初で最後の日本公開と言われている争闘の連作の巨大な計4作です。まず、その巨大さに圧倒され、どれも美しいです。争闘など題名の通り凄まじいわけですが、なんだか何を伝えたいのか、よく分からないんですよね。(笑)
その対比から天国と地獄、そんなようなものが伝わってくるのですが、どうも個々の人を一枚の大きなキャンバスに集合させただけ、そんな印象も受けます。

私はどちらかというと晩年の宗教画が好きだったかなと思いました。「イヴ」、「花の洗礼」など本当に美しく、心奪われました。そうかと思えば、この世の終末である3枚の「黙示録」など、その細密さに圧倒されて、どこを見ればよいのかと言葉を失うほどでした。また、「十字架降下」や「聖母子」などは、背景が金?であり、どことなく和を感じさせ、面白く、藤田嗣治らしい宗教画だなと思いました。あとは、やはり藤田=猫と言われるだけあっては猫は良いですね~。かわいいものから躍動のある表情のこわばったものまで様々なものがありましたが、どれも生き生きとした感じが伝わってきました。

意外で衝撃を受けたのが、「アージュ・メカニック」、子供が様々なおもちゃで遊んでいる絵なのですが、こんな絵も描いたのかと、良い意味で全作品の中で浮いた存在に見えました。新たな一面を見る事が出来た、そんな気がしました。

また、他にもアトリエの道具や自作の陶器、家具などの展示、晩年の念願だった教会建設の様子、上で述べた「構図」、「争闘」の修復の様子の映像などがあり、全体を通して飽きる事のない、ボリューム満点の展覧会で、私にとって久々に全てに満足できる展覧会だったと感じました。そして、図録も会場を回っている途中から絶対に買おうと思うほどで、迷い無く購入しました。

本当に良かったです! 藤田嗣治に興味がある方は足を運ばなければ損であることは間違いないでしょう。

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アンドリュー・ワイエス-創造への道程を見てきました

BunkamuraLink で開催中のアンドリュー・ワイエス-創造への道程Link を見てきました。
時間は1時47分ごろから1時間20分ほど。客の入りはまあそれなりに入っていましたが、混雑と言うほどではありませんでした。

私はアンドリュー・ワイエスWの絵を今まで実際に見た事がなかったので是非この機会にと言う事で見てきたわけですが、会場のある作品に沿えてあるワイエスの言葉に「私は季節の中でも冬や秋が好きだ」と言う言葉があったのですが、まさにそれが全てを表しているなと感じました。どこかもの悲しく、哀愁を漂わせる、それとともにアメリカらしさ、アメリカの原風景を感じ取る事が出来ました。

本展覧会の特徴は鉛筆や水彩による習作が多数展示されている事なのですが、これは私には良さ悪さがあると思いました。良い所は習作を並べて見る事で完成品への過程をうかがう事ができる事、中には完成品よりも水彩の習作の方が味があって良いと感じるものもあり、習作といえど完成度が高いものばかりだったのではないでしょうか。
ただ、その一方で、習作を並べておいて、それらを見ながら移動して、いざ完成品は…となると実物が無く、小さい印刷品が展示されているというのがいくつか見受けられ、それが残念でなりませんでした。実物を用意できないなら、最初から習作を展示するなと。(笑)

さて、上で、中には習作の方が良いと思う作品があったと書きましたが、それは例えば何かというと、展覧会の目玉?としてパンフレットに目立つように乗っている火打ち石、これなんかは完成品よりも水彩の習作の方が味があり、迫力を感じされて私はそちらの方が好みでした。

火打ち石
火打ち石(こちらはテンペラによる完成品)


一番好きだったのは松ぼっくり男爵です。この作品はワイエスが長年書き続けた題材の一つ、カーナー夫妻に関する絵で松ぼっくりを入れてあるヘルメットはカーナーさんが第一次世界大戦で従軍した際の記念のものなのですが、夫人はそんな事お構いなしに、松ぼっくりを集めるためのかご代わりにしているというものです。このエピソードを知るとなんだか和みますね。カーナー夫妻の生活まで伝わってきます。私自身、小中学校と松の道が通学路で高校も松に囲まれていたためか、松という題材に何か親近感が湧くというのもあるのかもしれません。

松ぼっくり男爵
松ぼっくり男爵


ワイエスの絵の面白いところは秋や冬のような同じ雰囲気の絵を描いていても、細部までこだわっているものと、描きたい部分をこだわって描いて後は結構適当に描いているものがあり、何だかつかみ所がない、そんなところじゃないかなと私は感じました。適当に描いていても、その勢いというか、線が格好良く、様になっているというのにも驚きです。実は適当に描いているように見えるだけで計算されているのかもしれません。(笑)

ちなみに、この展覧会の来場客へ向けての91歳のワイエスからのメッセージ映像が流されていたのですが、91歳でもしっかりしていて、まだまだエ ネルギー溢れている事に驚きました。ああいう絵を描き続ける人というのはやはり違うなと思いました。

というわけで、私にとってワイエスの絵に触れた初めての展覧会、季節的にも雰囲気が良く、よい意味で気を張らずに見る事が出来たのではないでしょうか。欲を言えば、習作だけでなく実物のクリスティーナの世界も見てみたかったなと。


どうでもいい事ですが、Bunkamuraから出て駅に向かっていた所、初めて外ナンバー(大使館の車)を見ました。おお、これが…と思いました。(笑)

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セザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃を見てきました

横浜美術館正面



横浜美術館Link で開催中のセザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃Link を見てきました。

帽子をかぶった自画像
帽子をかぶった自画像


「近代絵画の父」として知られるポール・セザンヌW、その画家の描いた絵は、象徴主義Wナビ派WフォーヴィスムWキュビスムWエコール・ド・パリWなど様々な画家に影響を与えました。
それは日本においてもそれは例外ではなく、洋画家はもとより、日本画家にも波及しました。
セザンヌの絵を中心に、そんなセザンヌ主義とも言えるセザンヌの影響を受けた画家らの絵を交え、その波及と足跡をたどる展覧会です。


以前から他の展覧会でセザンヌの絵をふれてきて、セザンヌの絵は自分には向いていないなと薄々感じていたのですが、今回のセザンヌを中心とした展覧会を通して、はっきりしました。

現時点では自分にセザンヌの絵を受容できる、良いと思える感性がない

と。(笑)
あえて言うならば、風景画、とりわけセザンヌがアトリエを構えたプロヴァンスの絵は割と好きかなと思います。

だからと言ってつまらなかったというわけではありません。
この展覧会の趣旨の1つであるセザンヌが与えた影響を知るという点では、みんな、影響受けているんだなぁ、確かに似ているなぁと、そういうものがはっきりと感じる事ができました。特にピカソらを代表とするキュピズムなんて最初は本当にセザンヌの影響なんてあったのだろうか、と疑っていたのですが、本当にあったんだなぁと今回の展覧会で感じ取ることができて良かったです。

私がこの展覧会で見ることができて良かったと思った作品は安井曾太郎Wの『婦人像』、これは以前テレビで見てから見てみたいと思っていました。私はまさかこの絵が展示されているとは知らなかったため、嬉しかったです。
また、ナビ派のモーリス・ドニWの絵も明るい、黄色がいいなと思いました。あと、おもしろかったのが日本画でセザンヌの影響を受けた小野竹喬W。日本画なのにセザンヌを感じるという違和感が良かったです。

とまあ私の感じた見所はこんなところでしょうか。

月曜の3時過ぎから見ましたが、まあ比較的少なくゆったりと見れた感じですね。1時間20分ほどで見回ることができたかと思います。

ちなみに横浜美術館に行ったのは1年ぶりです。
シュルレアリスムと美術-イメージとリアリティーをめぐって展を見てきましたLink
個人的にはやはりシュルレアリスムみたいな普通じゃない絵の方が好きかなと。

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近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力 を見てきました

洛北修学院村
洛北修学院村

平塚市美術館Link で開催された「近代日本画の巨匠 速水御舟W-新たなる魅力」を見てきました。

画法が一貫していないため、本当に全部同じ手による作品なのかと驚きました。伝統的な日本画、西洋画のような細密画を取り入れた日本画、琳派、印象派など様々なものを吸収し、絵を取り入れていて、その器用さには圧巻でした。作風がコロコロと変わるのは良くないという人もいると思いますが、常に新しいもの挑戦し、取り入れるという姿勢が私は好きですね。ただ、もしかしたら、才能に恵まれるということは画家にとって時に弊害となるのかもしれない、この展覧会を通してそんな風にも感じました。

私が一番好きだったのは上に載せた「洛北修学院村」です。これは絵そのものが良いというよりも、青が素晴らしいなと感じました。心を包み込んでくれる、そのような印象です。これは他の作品にも言えることなのですが、御舟の描く青は青がもともと持つ、心を落ち着かせてくれるという心理的効果をさらに高めている、そのような深みを感じ取る事ができます。

樹木
樹木

「猫(春眠)」と「山茶花に猫」
「猫(春眠)」と「山茶花に猫」


他に良いと思った作品をあげると、生き生きとした生命力あふれる「樹木」や「猫(春眠)」などかわいい猫を主題とした作品、「丘の並木」や「晩冬の桜」といった葉の枯れ切った細い枝木の哀愁漂わせる繊細な作品などでしょうか、ちなみに私は御舟の描く人物画はあまり好きになれませんでした。人物画も上記のように様々な画法で描かれているのですが、どれも巧いとは思います、しかし、心に来るようなものはありませんでした。まあこれは私自身が男性画には男らしさ・強さ、女性画には美しさ・色っぽさ・妖艶さのようなものを求めているせいでもあるのかもしれません。(笑)

約1年後に山種美術館Link でも御舟の展覧会が行われるということで機会があればぜひ行ってみたいと思います。

ちなみに今日が最終日ということで、あいにくの雨の中、自転車を走らせ30分ほどかけて行ってきましたが、空いていて、最後まで一通り見たら、折り返して作品を見直すなど、ゆったりと見ることができたので行った甲斐はありましたね。平塚市美術館は2月に行った河野通勢展Link 以来ですが、家から交通費をかけずに行けるところですので、是非今後もこういった意欲的な展覧会を期待したいと思います!


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