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アンドリュー・ワイエス-創造への道程を見てきました

BunkamuraLink で開催中のアンドリュー・ワイエス-創造への道程Link を見てきました。
時間は1時47分ごろから1時間20分ほど。客の入りはまあそれなりに入っていましたが、混雑と言うほどではありませんでした。

私はアンドリュー・ワイエスWの絵を今まで実際に見た事がなかったので是非この機会にと言う事で見てきたわけですが、会場のある作品に沿えてあるワイエスの言葉に「私は季節の中でも冬や秋が好きだ」と言う言葉があったのですが、まさにそれが全てを表しているなと感じました。どこかもの悲しく、哀愁を漂わせる、それとともにアメリカらしさ、アメリカの原風景を感じ取る事が出来ました。

本展覧会の特徴は鉛筆や水彩による習作が多数展示されている事なのですが、これは私には良さ悪さがあると思いました。良い所は習作を並べて見る事で完成品への過程をうかがう事ができる事、中には完成品よりも水彩の習作の方が味があって良いと感じるものもあり、習作といえど完成度が高いものばかりだったのではないでしょうか。
ただ、その一方で、習作を並べておいて、それらを見ながら移動して、いざ完成品は…となると実物が無く、小さい印刷品が展示されているというのがいくつか見受けられ、それが残念でなりませんでした。実物を用意できないなら、最初から習作を展示するなと。(笑)

さて、上で、中には習作の方が良いと思う作品があったと書きましたが、それは例えば何かというと、展覧会の目玉?としてパンフレットに目立つように乗っている火打ち石、これなんかは完成品よりも水彩の習作の方が味があり、迫力を感じされて私はそちらの方が好みでした。

火打ち石
火打ち石(こちらはテンペラによる完成品)


一番好きだったのは松ぼっくり男爵です。この作品はワイエスが長年書き続けた題材の一つ、カーナー夫妻に関する絵で松ぼっくりを入れてあるヘルメットはカーナーさんが第一次世界大戦で従軍した際の記念のものなのですが、夫人はそんな事お構いなしに、松ぼっくりを集めるためのかご代わりにしているというものです。このエピソードを知るとなんだか和みますね。カーナー夫妻の生活まで伝わってきます。私自身、小中学校と松の道が通学路で高校も松に囲まれていたためか、松という題材に何か親近感が湧くというのもあるのかもしれません。

松ぼっくり男爵
松ぼっくり男爵


ワイエスの絵の面白いところは秋や冬のような同じ雰囲気の絵を描いていても、細部までこだわっているものと、描きたい部分をこだわって描いて後は結構適当に描いているものがあり、何だかつかみ所がない、そんなところじゃないかなと私は感じました。適当に描いていても、その勢いというか、線が格好良く、様になっているというのにも驚きです。実は適当に描いているように見えるだけで計算されているのかもしれません。(笑)

ちなみに、この展覧会の来場客へ向けての91歳のワイエスからのメッセージ映像が流されていたのですが、91歳でもしっかりしていて、まだまだエ ネルギー溢れている事に驚きました。ああいう絵を描き続ける人というのはやはり違うなと思いました。

というわけで、私にとってワイエスの絵に触れた初めての展覧会、季節的にも雰囲気が良く、よい意味で気を張らずに見る事が出来たのではないでしょうか。欲を言えば、習作だけでなく実物のクリスティーナの世界も見てみたかったなと。


どうでもいい事ですが、Bunkamuraから出て駅に向かっていた所、初めて外ナンバー(大使館の車)を見ました。おお、これが…と思いました。(笑)

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セザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃を見てきました

横浜美術館正面



横浜美術館Link で開催中のセザンヌ主義―父と呼ばれる画家への礼讃Link を見てきました。

帽子をかぶった自画像
帽子をかぶった自画像


「近代絵画の父」として知られるポール・セザンヌW、その画家の描いた絵は、象徴主義Wナビ派WフォーヴィスムWキュビスムWエコール・ド・パリWなど様々な画家に影響を与えました。
それは日本においてもそれは例外ではなく、洋画家はもとより、日本画家にも波及しました。
セザンヌの絵を中心に、そんなセザンヌ主義とも言えるセザンヌの影響を受けた画家らの絵を交え、その波及と足跡をたどる展覧会です。


以前から他の展覧会でセザンヌの絵をふれてきて、セザンヌの絵は自分には向いていないなと薄々感じていたのですが、今回のセザンヌを中心とした展覧会を通して、はっきりしました。

現時点では自分にセザンヌの絵を受容できる、良いと思える感性がない

と。(笑)
あえて言うならば、風景画、とりわけセザンヌがアトリエを構えたプロヴァンスの絵は割と好きかなと思います。

だからと言ってつまらなかったというわけではありません。
この展覧会の趣旨の1つであるセザンヌが与えた影響を知るという点では、みんな、影響受けているんだなぁ、確かに似ているなぁと、そういうものがはっきりと感じる事ができました。特にピカソらを代表とするキュピズムなんて最初は本当にセザンヌの影響なんてあったのだろうか、と疑っていたのですが、本当にあったんだなぁと今回の展覧会で感じ取ることができて良かったです。

私がこの展覧会で見ることができて良かったと思った作品は安井曾太郎Wの『婦人像』、これは以前テレビで見てから見てみたいと思っていました。私はまさかこの絵が展示されているとは知らなかったため、嬉しかったです。
また、ナビ派のモーリス・ドニWの絵も明るい、黄色がいいなと思いました。あと、おもしろかったのが日本画でセザンヌの影響を受けた小野竹喬W。日本画なのにセザンヌを感じるという違和感が良かったです。

とまあ私の感じた見所はこんなところでしょうか。

月曜の3時過ぎから見ましたが、まあ比較的少なくゆったりと見れた感じですね。1時間20分ほどで見回ることができたかと思います。

ちなみに横浜美術館に行ったのは1年ぶりです。
シュルレアリスムと美術-イメージとリアリティーをめぐって展を見てきましたLink
個人的にはやはりシュルレアリスムみたいな普通じゃない絵の方が好きかなと。

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近代日本画の巨匠 速水御舟-新たなる魅力 を見てきました

洛北修学院村
洛北修学院村

平塚市美術館Link で開催された「近代日本画の巨匠 速水御舟W-新たなる魅力」を見てきました。

画法が一貫していないため、本当に全部同じ手による作品なのかと驚きました。伝統的な日本画、西洋画のような細密画を取り入れた日本画、琳派、印象派など様々なものを吸収し、絵を取り入れていて、その器用さには圧巻でした。作風がコロコロと変わるのは良くないという人もいると思いますが、常に新しいもの挑戦し、取り入れるという姿勢が私は好きですね。ただ、もしかしたら、才能に恵まれるということは画家にとって時に弊害となるのかもしれない、この展覧会を通してそんな風にも感じました。

私が一番好きだったのは上に載せた「洛北修学院村」です。これは絵そのものが良いというよりも、青が素晴らしいなと感じました。心を包み込んでくれる、そのような印象です。これは他の作品にも言えることなのですが、御舟の描く青は青がもともと持つ、心を落ち着かせてくれるという心理的効果をさらに高めている、そのような深みを感じ取る事ができます。

樹木
樹木

「猫(春眠)」と「山茶花に猫」
「猫(春眠)」と「山茶花に猫」


他に良いと思った作品をあげると、生き生きとした生命力あふれる「樹木」や「猫(春眠)」などかわいい猫を主題とした作品、「丘の並木」や「晩冬の桜」といった葉の枯れ切った細い枝木の哀愁漂わせる繊細な作品などでしょうか、ちなみに私は御舟の描く人物画はあまり好きになれませんでした。人物画も上記のように様々な画法で描かれているのですが、どれも巧いとは思います、しかし、心に来るようなものはありませんでした。まあこれは私自身が男性画には男らしさ・強さ、女性画には美しさ・色っぽさ・妖艶さのようなものを求めているせいでもあるのかもしれません。(笑)

約1年後に山種美術館Link でも御舟の展覧会が行われるということで機会があればぜひ行ってみたいと思います。

ちなみに今日が最終日ということで、あいにくの雨の中、自転車を走らせ30分ほどかけて行ってきましたが、空いていて、最後まで一通り見たら、折り返して作品を見直すなど、ゆったりと見ることができたので行った甲斐はありましたね。平塚市美術館は2月に行った河野通勢展Link 以来ですが、家から交通費をかけずに行けるところですので、是非今後もこういった意欲的な展覧会を期待したいと思います!


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「大琳派展-継承と変奏-」、「スリランカ―輝く島の美に出会う」を見てきました

展覧会の看板



東京国立博物館Link で開催中の大琳派展-継承と変奏-Linkスリランカ―輝く島の美に出会うLink を見てきました。

まず、大琳派展を14時25分頃より見始めました。前回来た時にやっていた対決展Link よりは空いていましたが、それでも結構混んでいた印象です。

俵屋宗達と尾形光琳の作品は対決展で対比という形で初めて見て、私としてはそれほど感じる物がなかったのですが、東京国立博物館の年間パスポート(6回分)をある事で手に入れていたため、なるべく使わないともったいないと思い、偶然、平日の午後に暇ができたので、これはチャンスと思い、見てきた次第です。

さて、内容についてですが、この展覧会では、琳派Wと呼ばれる作風、手法が似ている芸術家たちの作品が一堂に会し、俵屋宗達W本阿弥光悦W尾形光琳W尾形乾山W酒井抱一W鈴木其一Wといった感じで時代の流れとともに展示されています。

基本的に宗達と光琳の作品は残念ながら屏風という保存が難しい?作品が多いためか、どれも状態劣化、色が褪せているなどがあるので、作品が出来上がった当時に見ることができたら美しい感じだったのだろうなと思いました。逆に今の状態で見ることで落ち着いた、深みのある印象を受けて良いと思われる方もいるかもしれませんが、私はやはり目に見える劣化した作品をあまり良いとは思えません。

また、私には茶碗や文筆の良さが分からないので、そういった作品もあまり楽しめませんでしたね。そうなると、楽しめる作品は限られてくるわけで、私としては一番新しく、状態も良い、鈴木其一の作品が一番堪能できたと感じました。秋草・月に波図屏風は圧倒的な繊細さで美しいですし、雨中桜花楓葉図は葉のグラデーションが美しくクリーム色の背景との対比で映えていて、しんみりと来て良かったですね。また、燕子花図屏風の花の深い藍色から、もの悲しくも力強く印象的でした。

だからといって、興味のない作品はさっと通り過ぎたわけではありません。全作品の題名と説明文を読んである程度眺めて回りましたし、もちろん、宗達と光琳の作品で良いと思うもの、面白いと思うものもいくつかありました。

まず、目玉の一つである宗達、光琳、抱一、其一の4人の風神雷神図、これは私は一番、宗達のものが重厚な雰囲気が出ていて良いと感じました。宗達の双犬図や光琳の竹に虎図など動物を主題とした作品は他の作品とは一風変り、漫画っぽさを醸し出しているのが可愛く感じたり、宗達の白象図杉戸なんて、これはないだろうと笑ってしまいつつもユニークで面白い絵でした。

私が全体的に感じたことは四季の変化を巻物に描いたものがあったりしたのですが、どれも秋~冬あたりが好きだったことです。今の季節だからというのもあるかもしれませんが、その部分が心に深く感じるものがありました。

見るのにかかった時間は約1時間25分ほど。私と同じぐらいに見終えた老夫婦は2時間ほどと言っていたので、混雑という状況では別ですが、ある程度の混み具合でゆっくり見るとそのぐらいになるのではないでしょうか。


次に「スリランカ―輝く島の美に出会う」を見たのですが、その展覧会がやっている表慶館に入ったのが16時過ぎで「17時で終了ですが、どうしますか」と言われたのですが、折角来たことだし、人入りも少ないだろうということで入りました。だいたい客がおそらく館内に10人ほどだったのではないかと思います。そのため、時間を気にしつつ、長い説明文はさっと見て面白い作品はそれなりにじっくりと見て回りましたが、50分もかからずに回れました。そのため、もう少しゆっくり見ればよかったかなとも思いもしました。

私はこのスリランカ展にほとんど期待などしていなかったのですが、これが思いのほか面白い。人が少ないため、ゆとりをもって見て回れたことも、そう感じた理由にもなるかもしれませんが、面白い。

仏像なんてどれも同じような格好だと思いがあったのですが、モデルみたいなポーズをしたものなど結構面白い体制の仏像が多く、これには驚きで、その仏像自体の出来もどれも素晴らしく、スリランカは未開の地のような印象だった私にとっては衝撃でしたし、小さい仏像など格好よくて、私が集めているフィギュアのように是非、家に飾りたいなんて思うものもありました。(笑)

また、装飾品、道具など当時、王宮で使われていたものも興味深いものが多かったですね、装飾品などきらびやかで精巧な作りでしたし、面白いというものでは便器や耳かき、浣腸器などバリエーションに富んだ展示となっていました。

そんなわけで、大琳派展はまあそれなりに(鈴木其一に興味を持った)、スリランカ展は意外に面白かった。そんな印象を受けた2つの展覧会でした。

大琳派展-継承と変奏-
会期:2008年10月7日(火)~11月16日(日)(月曜休館)
東京国立博物館のサイト内のページLink
展覧会専用のページLink

スリランカ―輝く島の美に出会う
会 期 2008年9月17日(水)~11月30日(日)(月曜休館)
東京国立博物館のサイト内のページLink
展覧会専用のページLink


白象図杉戸
白象図杉戸

竹に虎図
竹に虎図

燕子花図屏風
燕子花図屏風

雨中桜花楓葉図
雨中桜花楓葉図

秋草・月に波図屏風
秋草・月に波図屏風


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五姓田のすべて -近代絵画への架け橋-展を見てきました

神奈川県立歴史博物館入口前



神奈川県立歴史博物館Link で開催されている五姓田展Link を見てきました。今週の金曜までということで、あわてて行ってきたような感じです。ちなみに、神奈川県立歴史博物館は初めて行きました。横浜からみなとみらい線の馬車道が最寄り駅なのですが、往復360円をけちるために横浜から30~40分ほど歩きました。まあいろいろ周りを見ながら歩けたのでよかったのではないかと思います。

さて、この五姓田展ですが、私が毎週録画して見ているNHKで放送中の新日曜美術館の最後でやっているアートシーンLink で知り、興味をもったので行ってきた次第です。美術館情報は結構事前に調べてたりするのですが、博物館系はあまり興味がないので見逃してしまうことが多く、知ることができてよかったです。

内容について、博物館のページを見ていただければ分かりますが、五姓田派というのは横浜が開港して、それ同時に多くの西洋文明が日本に入ってきました。その中に洋画があり、それに関心を持ち積極的に自分のものにしようと取り込んでいった画家たちで、洋画界のさきがけと言えるのではないでしょうか。

和洋折衷と言う言葉がありますが、まさにその言葉がピッタリな展覧会で、洋画なのに日本、良くも悪くもそれまでの日本画とは違い、リアルな日本を描いているという印象でした。洋画のさきがけということで今からすれば未熟に見える作品も見受けられましたが、こうやって日本の洋画、洋画教育は開花していったのだと言うものを肌で感じ取れたのが良かったです。またいくつか、私が好きなギャグのような面白い絵やすごい細密描写の絵とも出会えたのも良い収穫でした。

ただ、難点を言うと、私はこの博物館へ足を運んだのが初めてなので他の時がどうなのか分かりませんが、照明が他の美術館と比べて明らかに暗いという点です。別に見ること自体には支障はありませんが、作品の劣化防止という事を考えても暗い感じがしました。(笑)
また、これはいつもどの展覧会でも毎度ながらに思うことではあるのですが、ポストカードをもっと充実させて欲しいということですね。ちなみにこの展覧会ではどうやら他の美術館から引き取ったポストカードが売られていました・・・ひどいのは郵便番号5ケタのポストカードがあったということ、これは5ケタということで通常100円のところ、50円でしたがいったい何年前だよと。(笑) (調べたところ98年らしいです。10年前・・・)

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